とうきょう、ときめくめくるめく。

96年生まれ、東京・高田馬場在住のサブカル戯れ日記。

2018年だからこそ見るべき坂本裕二作品 〜『問題のあるレストラン』〜


「『いい仕事』がしたい、ただ、いい仕事がしたいんです。 ドキドキしたいんです。 手に汗を握って息をするのも忘れるような、そんな瞬間に出会いたい。人生ってきっと、地位や名誉やお金ではない。人生はどれだけ心が震えたかで決まると思うんです。」(『問題のあるレストラン』#1)

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『問題のあるレストラン』は21世紀の新しい「居場所と幸福」の物語である。

人間嫌いのシェフ、「オカマ」、自信がない東大出、……
以上はこのドラマの登場人物に対する表現だが、これらはおそらく正しくない。

登場人物の表現がしづらい(もしくは、今ある言葉で表現しづらい)ことは現代のドラマにおいて非常に重要な要素だと感じる。

テレビドラマは社会を映すとはよく言われたものだが、人間性や人生観が多様化した現代において、登場人物がシンプルなフレーズで表現できないのはそのドラマが鋭く社会を映していることの表れだろう。

そんな多様な登場人物たちは、主人公の田中たま子(真木よう子)にビストロの開業に誘われる。
ビストロfouのメンバーたちは誰かのための「居場所」を運営しながら自らの「居場所」をも獲得していく。

そんな自らの手によって「居場所」をつくることは21世紀の生存戦略として非常に正しいものであると感じる。現に、たま子などの登場人物は既存の社会にある誰かによって作られた「居場所」には馴染めなかったものたちばかりだからだ。

ここで、「仕事」は「居場所」を持続可能にしていくことにすぎなず「居場所」の持続可能性は「幸福」に繋がる。
つまり、たま子そしてその仲間たちの「幸福」は「仕事」と密接に結びついているのである。

ここに働き方改革や社会福祉だけでは超えられない壁が存在する、と感じるのは私だけだろうか。


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最終回、ビストロfouの人間と<他者> との新たな出会いが描かれる。

臼田あさ美演じる鏡子は<息子の彼女>と、二階堂ふみ演じる結実は<「成功」しているかつての同級生>と、松岡茉優演じる千佳は<腹違いの弟>と。(加えて、最終回の終盤で繰り広げられる「恋バナ」とはいつか出会うべき<他者>についての話だ。)

また、ビストロfouの閉店の要因になったのも顔が見えない誰か(=<他者>)のクレームだ。

坂本裕二は<他者>がいないと「居場所と幸福」も存立し得ないが、その「居場所と幸福」を崩壊するのも<他者>の存在だ、という批評性のあるメッセージを残したように感じる。

これから我々は、地域社会に支えられた地縁的共同体(=「居場所」)や終身雇用性(=ライクダイニングサービス!)に支えられた昭和的共同体(=「居場所」)が崩壊した社会を生きなければならない。

誰もがビストロfouのメンバーたちのように見知らぬ<他者>と出会いながら「幸福」を築いていかなければならないだろう。

そうした時代にたま子のように「心が震え」させることができるようになりたい。

 

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はじまり、はじまり、と扉がひらく

 

初めまして、craft-boyです。1996年生まれ。阪神・淡路大震災オウム事件があり、windows95が発売され、エヴァンゲリオンが放映された次の年に生まれた。

見田宗介大澤真幸がいうところの「虚構の時代」が終わった次の年だ。

そんな僕はこのブログで主にリアルタイムで進行するカルチャーについて書いていこうと思う。

95年以降生まれの、95年以降生まれによる、95年以降生まれのための、カルチャー談義だってあってもいいはずだと思ったから。

僕たちの世代はテレビでドラマ版『モテキ』2話を見て、アニメ版『打ち上げ花火』を劇場で見て、ドラマ版『打ち上げ花火』をhuluでスマホで見た世代だ。比喩的に、あくまでも比喩的に表現すると。

80年代や90年代に思春期を過ごした方々みたいには楽しめないことだらけだ。


セクシーボイス アンド ロボ』というドラマがある。いまからちょうど10年前の2007年に放送された、松山ケンイチ大後寿々花主演、木皿泉脚本、河野英裕プロデュースのドラマ。

amzn.asia



第1話の冒頭で主人公のニコはスパイと殺し屋の闘争を見たことを、日常に訪れた非日常に出会ったことを、<誰か>にどうしようもなく伝えたくなったとき<他者>との出会う場所、つまり<セカイ>への入口は2007年の地方の女子中学生にとって「新興宗教」か「テレクラ」しか選択肢がなかった。
(この「新興宗教」と「テレクラ」のハイブリットが「アイドル」だと思うのだが・・・ 木皿泉の時代描写は本当にすごい)


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そんなニコ世代も10年経ってブログをつかって「どうしようもなく関わっている」この<セカイ>に伝えたいことを伝えられるようになった。






これからどうぞお付き合いください。